『コーヒーの科学』とは
『コーヒーの科学』は講談社から出版されている自然科学や科学技術の話題を取り扱うブルーバックスシリーズの一つで、京都大学出身の「旦部幸博」が書いたものです。
コーヒーを取り扱う書籍としては比較的新しく、2016年に出版されました。
「コーヒーは何か」というところから、「コーヒーをおいしく淹れる方法」、「コーヒーの医学」について、生物学的、化学的、物理学的…といった科学的立場からの見解や事実を論文や書籍を元に書かれています。
コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか (ブルーバックス) [ 旦部 幸博 ]価格:1,188円 (2023/3/3 18:38時点) 感想(4件) |
『コーヒーの科学』を実際に読んでみて
化学を専攻している自分でも専門的な話が多く、少し読みづらいと感じました。また、特に1~3章は固有名詞もある程度あるので、熟読というよりは、そういうものがある程度で受け入れ、サクサク読み進めるのがいいと思いました。内容は素晴らしく、信用性の高い情報が多いです。
自分がなるほどと思った情報を書いていきます。
- 人間は本来、食べてはいけないものを苦味や辛味といった味覚で、危険だと判断します。コーヒーは苦いが、大人になるにつれて、美味しさを感じます。それは、大人になるまでの過程でコーヒーの苦味は安全な苦味だと認識するためです。そのため、周囲にコーヒーを飲む人が多かったり、飲む回数が多いと、コーヒーが早く飲めるようになります。(この理論は、ビールなどにも通用すると感じました。)
- カフェインには他の植物の生育を抑える役割があり、これにより、コーヒーの木は栄養を集めることができます。さらに、ナメクジやカタツムリといった生物に毒性を示すため、このような害虫を寄せ付けない働きもあります。しかし、カフェインを好む生物もいて、そのような生物は寄って来るため問題となっています。
- 第二次世界大戦の頃、当時最もコーヒー豆の入手が容易だったアメリカでも、生豆が品薄になってしまいました。その時に、少量の豆で、満足感を得るためにお湯で薄めたコーヒーがアメリカンコーヒーの始まりです。
- コーヒーの粉は多孔質(穴がたくさん空いている)で、その隙間は二酸化炭素を主成分とするガスで充填されています。抽出の時にお湯をかけると、二酸化炭素が穴から出てきて、粉が膨らみます。焙煎直後が最もガスの量が多いので、膨らみは新鮮さの証と言われます。
- コーヒーの医学的知見としては、適度のコーヒーはII型糖尿病や癌のリスクが低下させる働きがあることが知られています。また、成人はコーヒー1杯のカフェインで、15分後~2時間まで、覚醒効果が持続します。そのため、コーヒーを飲んで、15分の仮眠を取ると、寝起きがスッキリします。さらに、コーヒーは大腸のぜん動運動を活発化させる働きがあるため、便秘解消に効果があると言われています。
- カフェインレスコーヒーは、1903年にルートビッヒ・ロゼリクスにより発見されました。そこから、生豆を塩水に浸し、ベンゼンという液体で数回洗うことで、カフェインが除かれたコーヒーができます。今では、超臨界流体という、個体でも液体でも気体でもない二酸化炭素で、生豆を処理することでカフェインを取り除いています。
私は、この本は2度3度と読んでいくことで、色々な発見ができる本だと感じました。
まとめ
『コーヒーの科学』は、科学的立場から書かれていて、少し専門的なところがあるため、科学に疎い人には少し読みづらく感じるでしょう。しかし、内容としては論文や書籍を元に書かれているため、信用性があり、また、深く読んでいくことで新しい知見が得られると思います。私個人としては、著者が、「コーヒーは癌の予防になる」と書かずに、「適度のコーヒーは癌のリスク低下になる」と書いているところに、科学者としての信頼性を感じました。
ぜひ一度読んでみてください。